精密微細加工

フェムト秒レーザーによる微細加工

レーザー微細加工では集光されたレーザー光を用いて、材料を局所的に除去、改質、または構造化します。レーザーパルスが表面に当たると、そのエネルギーは吸収され熱またはプラズマに変換されることで溶融、蒸発、あるいは構造変化を引き起こします。
数ピコ秒未満のパルスを放射する超短パルスレーザーでは、この相互作用は熱拡散よりも速く起こります。その結果、熱が拡散する前に材料が除去される「コールド」アブレーションが実現し対象箇所の周囲に影響を与えません。そのためフェムト秒加工は、ナノメートルレベルの精度と最小限の付随的損傷が求められる用途に特に適しています。

フェムト秒加工 vs. ピコ秒加工

特性 フェムト秒レーザー ピコ秒レーザー
パルス幅 < 1 ps 1 - 10 ps
アブレーションメカニズム 非熱加工、多光子イオン化プロセス 部分的に熱寄与
エッジ品質 非常に良い。バリ無し 部分的に溶融あり
対象材料の自由性 高い。透明材料での加工可能 主に吸収性の材料限定
加工精度 < 100 nm 達成可能 サブミクロンオーダ
スループット 低 (パルス当たり), 高品質 高 (パルス当たり), 低いエッジ忠実度

フェムト秒レーザーは極めて高い精度、最小限のデブリ、あるいは損傷のない表面が求められる加工アプリケーションに適しています。例えば半導体のスクライビング、​​透明材料の加工、マイクロ光学部品の製造などです。
一方、ピコ秒レーザーは加工速度と品質のバランスが取れているため、産業用スループットとコスト効率の高さが求められる製造アプリケーションに最適です。

代表的なアプリケーション

半導体 & エレクトロニクス

半導体産業においてフェムト秒レーザーは熱応力を最小限に抑えながら、マイクロスケールのパターニング、ビアドリリング、ウェーハダイシング、薄膜アブレーションを可能にします。超短パルスレーザーはサファイア、GaAs、SiCなどの脆弱な材料をマイクロクラックを発生させることなくきれいに切断することを可能にします。
また、ディスプレイ製造やフレキシブルエレクトロニクスにおける透明フィルムの選択的な層除去や修復にも重要なツールです。
次世代半導体においてはフェムト秒マイクロマシニングは、従来の熱加工では不可能だった3D構造化、フォトニックインターコネクト、量子フォトニックチップ製造といったプロセスをサポートします。

医療 & ライフサイエンス

医療分野において超短パルスレーザーは精度と安全性の代名詞となっています。フェムト秒パルスは角膜手術(LASIK、SMILE)、マイクロ流体チャネルの製造、生体適合性インプラントの構造化、ラボオンチップの製造などに利用されています。
相互作用は非熱的であるため、生体組織やポリマーを火傷や付随的な損傷なしに切断または改変することができ、新たな種類の低侵襲手術やバイオメディカルデバイスを可能にします。

光学 & フォトニクス

光学部品メーカーは導波路描画、ファイバーブラッググレーティングの刻印、回折光学素子の製造、表面機能化などにフェムト秒レーザーを活用しています。超短パルスの非線形相互作用により、透明材料内部の屈折率を直接制御することが可能になり集積干渉計、カプラ、マイクロレンズといった真の3Dフォトニック構造を実現できます。

自動車 & モビリティ

自動車産業やeモビリティ産業ではレーザー微細加工技術が高信頼性センサー、バッテリー部品、マイクロインジェクターの製造を支えています。フェムト秒レーザーとピコ秒レーザーは薄い金属やセラミックスのバリのない切断、燃料ノズルやタービン部品の冷却穴の精密な穴あけを可能にします。
自動車のスマート化と電動化が進むにつれ、超短パルスレーザー加工は重要な部品の小型化と堅牢性の両立を実現します。

ファイバーベースのシード光源の重要性

現代の高出力産業用レーザーは一般的にマスターオシレーターパワーアンプ(MOPA)システム構造を採用しています。その中核を成すのはシステム全体のパルス特性、タイミング、スペクトル品質を決定する、mW単位の小型低出力発振器であるシードレーザー光源です。

ファイバーベースのフェムト秒およびピコ秒シーダーには、次のような決定的な利点があります。

  • 優れたビーム品質(M² ≈ 1)により精密なフォーカスが可能
  • 低ノイズと高い安定性により、一貫した加工結果を実現
  • 産業環境やスワップイン統合に適したコンパクトで堅牢な設計
  • ポンププローブまたはマルチレーザーセットアップの同期機能

シードレーザー光源はパルス幅、波長、タイミングジッターを決定するため、その性能はプロセス品質と再現性に直接反映されます。
ファイバー技術は長寿命、メンテナンスフリー、そしてYb、Er、またはTmドープ増幅媒体に基づく増幅器チェーンへの容易な統合も可能にします。

微細加工のための波長 - UVから中赤外線まで

波長 典型的なレーザー光源 アプリケーションのハイライト「
355 nm (UV) YbまたはNd固体レーザーの第3高調波 金属、ポリマー、薄膜の微細構造化、高解像度のパターン形成
532 nm (Green) Yb固体レーザーの第2高調波 透明材料加工(ガラス、サファイア)、マイクロオプティクス
790–1030 nm (NIR) Ti:サファイアまたは Ybファイバーレーザー ユニバーサル材料処理、ウェーハダイシング、3D構造化
1064 nm (IR) TmまたはHoファイバーレーザー 新興アプリ:ポリマー、半導体(GaN、Si)、バイオメディカル材料の加工

2µmの波長域は近年、特殊シーダー光源向けや新たな加工機能の実現に向けて注目を集めています。
この波長域では多くのポリマーや半導体における吸収が増大するため、プラズマ遮蔽を低減しながら、穏やかかつ効率的なアブレーションが可能になります。
TmおよびHoベースのフェムト秒シーダーは、赤外線マイクロマシニング、THz波発生、さらには2µmにおける水分吸収を利用して精密な深度制御を可能にするバイオメディカルレーザー手術など、新たな可能性を切り開いています。

産業界における超短パルスレーザー加工の利点

  • 無熱処理加工:熱影響部(HAZ)、再鋳、マイクロクラックなし。

  • さまざまな汎用材料への対応:金属、誘電体、ポリマー、セラミックス、透明結晶。

  • 高アスペクト比構造:ほぼ垂直な側壁での穴あけ・切断が可能。

  • ミクロンレベルの精度:回折限界のフォーカスビームと制御されたエネルギー付与により実現。

  • 再現性と自動化:ロボットシステムやガルバノスキャナシステムへの統合に最適。

  • 3D構造化機能:フォトニクスおよびライフサイエンスデバイス向け透明材料の内部改質。

    これらの特性によりフェムト秒レーザーは次世代ナノファブリケーションおよび精密製造における重要な実現ツールとなっています。

次世代技術への道を切り開く事例

  • 3Dフォトニックチップ:フェムト秒レーザー描画により、ガラス内部に集積導波路とカプラが形成され、量子フォトニクスと光コンピューティングの高度なデバイス基盤を形成します。
  • フレキシブルOLEDディスプレイ:ピコ秒レーザーはサブミクロン精度で透明導電膜を形成し、より薄く曲げられるディスプレイを実現します。
  • 埋め込み型マイクロセンサー:フェムト秒パルスは生体適合性材料を汚染なくパターン化し、次世代の健康モニタリングを可能にします。
  • ウェーハレベルパッケージング:高精度のシリコン貫通ビアと誘電体アブレーションにより、高度な異種材料統合を実現します。
  • 航空宇宙・自動車部品:クリーンなドリル加工と表面テクスチャリングにより、軽量設計における接着性、冷却性、摩擦性能が向上します。

Conclusion

フェムト秒レーザー微細加工は精密な製造技術の最高峰です。超短パルス幅、空間制御、そして材料への柔軟性を組み合わせることで、比類のない品質と最小限の熱影響を実現します。
最新のファイバーベースシード光源(汎用加工用の1030nmから、特殊用途向けの新興2µm領域まで)と組み合わせることで超短パルスレーザーは半導体、医療、光学、自動車産業の進歩を強力に推進します。

デバイス寸法が縮小し、設計の複雑さが増すなかフェムト秒レーザー微細加工は、1パルス、1ミクロン、そして1つのアイデアを常に新たな可能性へと進化させ続けています。

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