量子センシング & 分析技術のためのチューナブルレーザー

Measuring properties and testing theories at the limits

  • 時間 & 周波数測定 
  • 基本定数と基礎理論の評価試験
  • 原子の干渉、回転、加速度の評価
  • レーザーを用いた微量ガス分析(ATTA, RIMS)
  • Bフィールド測定のための非線形光磁気回転
  • 心磁図検査。心臓の磁場測定
  • 脳磁図検査。脳(ニューロン)の磁場測定

計量学は科学の中で最も古い分野の一つで、その技術はキリスト生誕の何千年も前から人類に応用されてきました。人々は太陽と月の動きをつぶさに観察することで暦をつくりました。これにより種蒔きや冬支度に最適な時期を決定することができました。時間はマヤ文明において彼らの神々である太陽と月を称えるための素晴らしい建物である宗教的な場所 - 潜在的にストーンヘンジのような - を建立したように重要でした。大航海時代においては、適切な航路の選択には時間の正確な計測が必要であることが明らかになりますます精密な時計が作られるようになりました。

今日では、原子冷却やイオントラッピングによる高精度な周波数測定により時間と長さの精密な基準が得られ、全地球測位システム(GPS)の位置分解能が日々向上しています。これらの測定は微細構造定数αやライドバーグ定数のような基本定数を決定したり、また時間非依存性のような物理学の基本原理を検証するために用いられています。

原子干渉計は重力(重力計)や回転(ジャイロスコープ)を最高の精度で測定するために使用されます。地球の地震や火山噴火の研究、天然資源や地球外の隠された天体構造物の発見、地球潮汐モデルや弱等価原理、一般相対性理論の検証など様々な目的に利用されています。 

ガスフローのモニタリングには分光学的なガス分析が広く行われています。レーザーを用いた微量ガス分析や同位体比測定のための高度な手法が開発され、大気汚染、古代の遺物や地下水の年代測定、プルトニウム生産の検出などに利用されています。

 

時間と周波数の測定

時間と周波数な精密測定技術は1967年のセシウム原子の標準規格にさかのぼることができます。1秒とは、電子基底状態にある2つの超微細準位間のm=0からm=0への遷移のために133Cs原子の共鳴周波数が9,192,631,770回振動するのに必要な時間と定義されています。ラビ(1944年ノーベル物理学賞受賞)によって開発され、ラムゼイ(1989年ノーベル物理学賞受賞)によって改良された分光学的な方法でマイクロ波周波数において測定が行われています。最初のCs原子時計は原子ビームに基づいていました。その後マイクロ波と原子雲との相互作用時間を長くするために原子泉を使用することで時間測定の分解能を向上させた、いわゆる原子泉時計が開発されました。

時間測定分解能を向上させるもう一つの方法は、セシウムのマイクロ波遷移の代わりに他の原子元素の光学的、あるいは紫外線遷移を利用する方法です。この方法では1秒の分解能を約100億分の1に分割するだけでなく、最大で約1000兆分の1にまで分割することができ、分解能が10万倍に向上します。実際には現在の光学格子内に閉じ込められたイオンや原子を用いた光学原子時計の不確かさは10-15~10-16程度が実現されています。現在最高精度の分解能を持つ2つの時計は水銀(Hg+)やアルミニウム(Al+)のイオントラップに基づいており10-17の不確かさを達成しています。このような時計は30億年以上の間に1秒の誤差しか持っておらず、これほど精密な測定が可能な他の手法は存在していません。このことから精密計測における現在の主な傾向は、可能であれば、測定単位を周波数/時間測定に変換することで行われています。

 

基本物理定数と試験

基本物理定数や基本物理理論の検証も、可能な場合には周波数測定法を用いて行われます。例えばライドバーグ定数は水素の高分解能レーザー分光法を用い、そのレーザー周波数を原子時計に参照することで検出されます。微細構造定数(現在広く受け入れられている理論ではゼロであるはずですが、天文学的観測ではゼロではないことがわかっています)の時間依存性を調べるために、異なる原子時計を比較検証することもできます。他の高分解能実験では最終的には重い原子や分子を使って電子の電気双極子モーメントを測定しようと試みます。ここでも標準モデルとCPTの不変性はEDMがゼロであることを予測していますがより高い精度でこれを検証することが重要です。例えば現在可能な測定精度から2桁ないし3桁しか離れていないレベルでゼロ点からの偏差を予測する標準モデルの拡張が提案されています。このように時間と周波数測定を通じて私たちの自然への理解のさらなる検証が進められているのです。さまざまな種類の非常に精密で安定した時計を用いて特殊相対性理論の基本原理、例えば光速の等方性(「マイケルソン・モーリーテスト」)や速度の独立性(「ケネディ-トーンダイクテスト」)、さらには一般相対性理論の基本原理、例えば重力の赤方偏移の普遍性などが検証可能なことはよく知られています。これらは物質と反物質の比較のような興味深い実験のほんの一例に過ぎません。基本的な定数の原子干渉測定については以下に簡単に説明します。

 

原子干渉計

原子干渉法は原子の波動的な性質や原子の光の相互作用を利用して原子の内部状態を干渉法で測定します。物質の波動干渉や内部状態の量子力学的干渉を検出します。例えば回転を検出するためのいわゆるサニャック干渉計があります。レーザー光波の代わりに物質波を使用することで、同じ干渉計の面積が実現できれば、何桁もの高い分解能が得られます。(ラマン型の)レーザー励起時における原子への光子の反跳を利用して、原子干渉計を用いて2つの基本量の比h/mを最高精度で測定します。この結果を他の精密測定と比較検証することで超微細構造の非常に正確な値を得ることが可能となります。自由落下する原子雲を持つ原子泉を用いて重力による加速度 g を測定することができます。この測定はレーザー誘起ラマン遷移を用いて3回の異なるタイミングで内部状態にある原子の垂直位置を符号化することによって行われます。ある最終的な内部状態にある原子の相対的な数はこの原子干渉計内の2つの可能な原子軌道の間の位相差に応じて、1と0の間で振動します。この相対的な原子数を測定することで位相差を決定し、異なる地球潮汐モデルを区別できるほど正確にgの値を抽出することができます。さらに原子の軌道の近くに質量を置き、干渉計の位相への影響を検出することでニュートン重力定数Gを測定することができます。同様のテストセットアップでは重力の赤方偏移を測定したり、異なる物体が重力下で全く同じように落下するかどうかを検証して弱い等価性原理をテストするためにも使用することができます。

 

ガス分析

レーザーを用いた微量ガス分析ではレーザーの狭帯域な線幅特性を利用して1種類のガスのみと、あるいは1つの原子の同位体のみと選択的に相互作用させます。適切な波長に調整されたレーザーで得られる吸収や蛍光をモニターすることでガスの密度を検出したり、ガスの流量をモニターすることができます。同位体選択性を高めた微量ガス分析のためにセグメント磁石を使用して異なる同位体の経路を分離し、それらの相対的な発生を検出する標準的なIRMS(同位体比質量分析法)へと変化させることもできます。すべての同位体のフィラメントベースのイオン化の代わりに個々の同位体が質量フィルタリング素子に入る前に狭線幅(半導体)レーザーを使用して選択的にイオン化を行います。この方法により1013までの同位体選択性が実証されました。原子トラップ微量分析では同位体を選択的に蓄積するために磁気光トラップを使用しており、非常に少ない同位体も蓄積することが可能です。

 

小磁場の測定

最小磁場の測定は非常に困難で多くの課題への挑戦が必要となります。一般的に用いられている方法は超伝導体をベースにしたSQUID(超伝導量子干渉素子)に依存しています。超電導現象は非常に低温でしか観測されないため「高温超電導」でさえ150K(-123℃)以下の環境が必須となりこれらの検出器は複雑かつ高価なものとなります。過去20年の間に別の技術が発明され、今後の展開が非常に有望視されています。この技術は、ガラスセル内の原子の試料とレーザービームを使って原子を特殊な磁気状態に光学的に励起します。この方法では原子の磁気モーメントがある特定の方向に向くように原子を非常に高い純度で「偏光」させることができます。次に2番目の直線偏光のレーザービームが試料に照射されます。原子の偏光状態に応じてレーザーの偏光には回転(「非線形磁気光学回転」)が生じこれを正確に検出することができます。磁場、例えば測定対象となる磁場は、原子の分極の乱れにつながり、それゆえに測定することが可能となります。

このようなレーザーベースの磁場測定の用途は多岐にわたっています。地球の磁場や、(もしそれが平面上に置かれたと仮定した場合の)大気中の変動をモニターするために使用されます。臨床/医学的用途としては心磁図検査と脳磁図検査があります。どちらも人体の持つ磁場の評価に基づいており生体電気測定よりも病理学的変化の発症を検出するための感度の高いツールとして提供されます。

 

トプティカ社が提供するソリューション

前述された高精度測定にはほとんどの場合、非常に狭い発振線幅と長期的な安定性を有するチューナブルなレーザが必要です。さらに信頼性の高い最先端のレーザー周波数安定化を行うためには特別なロッキングエレクトロニクスが必要となります。トプティカ社の「Photonicals」レーザー関連アクセサリーはレーザー光の特性評価、またビーム操作に役立ちます。本稿でご紹介した多くの実験ではすでに当社の製品が広く使用されています。トプティカフォトニクスは当社の理念を表す"A passion for precision. (精密さへの情熱)"というスローガンを常に誇りに思っています。また多くの国立研究機関や大学の研究室と密接な連携を保ち、精密測定に関連した共通の研究プロジェクトにも参画しています。当社の最新の革新的な製品シリーズであるPROテクノロジは最高の耐音響安定性と狭線幅を持つチューナブルレーザを製造することを可能にし、同時に長期安定性と使いやすさを兼ね備えています。PROシリーズの製品は測定分解能を次のステップに移行することを可能とします。様々なアプリケーションに合わせて、原子を光学的に励起・分極し、非線形磁気光学回転を測定するために必要なレーザーを幅広く提供しています。これらのレーザーは原子の遷移に合わせて波長をチューニングし、周波数を正確に安定化させることが可能です。この目的のためにルビジウム(Rb)、カリウム(K)、セシウム(Cs)用のファイバ結合小型飽和分光モジュール(CoSy)とデジタル制御モジュール(DigiLock)をご用意しており、レーザーと共に周波数ロッキングソリューションを使用することで簡単に目的を達成することができます。